GAINAX内「ウル準備室」→「山賀オフィス」に改称記念特別エッセイ 私と『王立宇宙軍』 (更新さぼっといてこんなもん書いてる場合じゃないけど……)

●そういや何で「王立」なのか?  今のとこどうやら日本唯一らしい(と勝手に思い込んでいた)「オネアミス の翼 王立宇宙軍」ホームページが開設以来けっこう好評で、たびたび見ず知 らずの方から感想のメイルなんか頂いたりして(といっても大したもんじゃな いですが)気をよくしていたところ、以前からの友人に「でもさ、なんでお前 みたいなヤツがこんな健全な映画が好きなわけ?」と聞かれ、少し返答に窮し てしまった。  そうである、この「オネアミスの翼 王立宇宙軍を紹介するホームページ」 のある「電氣アジール」の別のコーナーを御覧になっている方々には、このペ ージの作者が、「自称弱者は死ね」だの「俺は左翼じゃ救われねぇからファシ ストだ」だの「例の神戸の小学生殺しなんかより俺の方がもっと凄い外道だぞ」 とか無茶苦茶書いてるとんでもねぇ野郎だって事が既に知れているはずである。  確かに、なんで俺みたいなヤツがこんな健全な「悪しき情念」に欠ける作品 のホームページを作ってんだろう? う〜ん、確かに変だ。自分でそのWEB 上での言動の不一致に疑問を感じ、そんで更新もそっちにのけに、いろいろと 考えてみた。  自分に先の質問をした友人には、「いや、俺も口先じゃ過激だけど、昔はぜ んぜん怠惰で臆病で『王立』のシロツグ君みたいだったんだよ」と言ったとこ ろ「うそつけ、そんなわけはない筈だ!」と言う返答が返ってきた(笑)  確かに、俺の10代末期は、まぁ敢えてカッコ付けて言えば、さしずめ大江健 三郎の小説『セヴンティーン』と、中上健次の小説『十九歳の地図』を地で行 ってたよーなもんで(テロリズムの妄想に燃える勘違い少年、って感じか)、 なるほど、王立宇宙軍のシロツグ中佐とはあんまり似てない(笑)  そんな自分の本性からすると、例えば富野由悠季カントクの『機動戦士ガン ダム 逆襲のシャア』とか、押井守カントクの『紅い眼鏡』およびケルベロス ・シリーズとか、あるいは沢田研二主演の『太陽を盗んだ男』や三島由紀夫主 演の『からっ風野郎』みたいな、「手前勝手な破壊や闘争への『悪しき情念』 に取り憑かれた主人公が格好悪く自滅してく物語」の方が好きなはずである。  いや実際、この手の作品は今でもかなり好きだ。押井カントクのケルベロス ・シリーズなんてこの人の一番駄目な部分だけど、それが一番正直に出てるっ て意味じゃ捨てがたい(誰も言わないけど、押井原作の漫画版『犬狼伝説』の ケルベロス隊の運命は、ナチスの政権獲得に貢献しながら最後はヒトラーに棄 てられた突撃隊にそっくりだぜ)。 ●『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』小論(続きは後に)  そういや、これは後にじっくり書くつもりだけど、『王立』の山賀カントク と『エヴァンゲリオン』の庵野カントクは、富野由悠季氏の『逆襲のシャア』 を滅茶苦茶に高く評価している。山賀・庵野両氏による同人誌『逆襲のシャア  友の会』(93年刊行)は本当に「濃い」ぞ。  いや『逆シャア』の何が凄いって、あの映画、確かに「粛正」だの「天誅」 だのと右か左の過激派みてぇな用語がモロ出しだし、宇宙世紀にンなことやっ てんのって、そりゃダサダサなんだけど、そのへん富野カントクがやると半端 な全共闘ノスタルジーオヤジ(及びそのかぶれ若造)みたく臭くなく、ちゃん と思想的根拠が感じられるんだよな。この映画で俺が特に気に入ってんのは、 ネオ・ジオン総帥となったシャアが演説するシーンと、彼を救世主と慕う宇宙 難民たちに囲まれて電車に乗ってるシーン、ここで「ジーク・ジオン!」って 叫んでんのがジジババばっかり(笑)、あーこいつら、連邦政府のズサンな政 治でルサンチマン溜めてるわけやねぇ、ってのがもう凄くリアル!  でだ、これが「ガンダムW」なんかじゃ敵も味方も外ヅラが美形なだけの薄 っぺらなキャラで、要するに、作り手がファシズムとかの「悪しき情念」って もんの本質をまったく理解してないまんま単にお耽美なイメージ当てはめてる だけなんだよな。ま、いいけどぉ、これじゃ面白くないんだよ、俺みたいなヤ ツにとっては。  そーいやこんなことも言うのは俺だけだろうから俺が書いちゃうけど、ネオ ・ジオン総帥となったシャアって、なんか、高橋和己の『邪宗門』クライマッ クスで、巨大宗教結社ひのもと救霊会の教主となり、民衆を率いてクーデター を起こそうとする千葉潔と凄くイメージがだぶる。千葉潔は本心じゃ神も信じ てないし、よるべない飢えた信者達のことも愛しちゃいない、だってのに革命 を起こそうとする、彼を突き動かしてたのは強烈なニヒリズムによる現世への 苛立ちと破滅への願望だった、って感じでさ。あ、これがオウムの奴だとどっ か保身じみたトコがあってそんなにカッコよくねぇんだよ。  そうそう、この映画でのシャアのサイコーの台詞はやっぱ「ならば今すぐ愚 民共に英知を授けて見せろ!」だよね(笑)、この手のコト、右や左や宗狂入 ってて、どっか心の底で「俺はエリートだ」とか思ったことのある人なら絶対 一度は考えたことあるはず。 ●一回転したトコで中庸の「建設の精神」  ……ってとこでやっと「オネアミスの翼 王立宇宙軍」に無理矢理話を戻す。 以上のような『紅い眼鏡』評とか『逆シャア』評とかを書くのは、困ったこと に俺みたいな人間にとっては非常に楽しくて仕方ないんだが、しかしどっかで 「ああ、こういうこと書くのは借り物の言葉だよな」って気がしてしまわざる を得ない。だって、俺、偉そうなこと書いてるけど、やっぱ現実には人殺しも できない臆病モンのおたくだもんな。やったことと言やぁ……「B級保存版」 か、掲示板「WEBメモ」の過去の書き込みでも見てちょうだい。  単純な俺は、10代の末期ごろには背伸びしてカッコつけて自分をテロリスト やごろつきに見立ててけど、さすがに20歳を過ぎると、実際の自分はそんな立 派なもんじゃない、そんなカッコよく破滅なんか出来ない、と、当然のことに 気づきだした。実は、「王立」を初めて映画館の大画面で見たのはその頃だっ た。  90年代の初め頃、東京・高田馬場にバンダイの経営する「エモーションシア ター」ってのがあって、バンダイエモーションレーベルのアニメとかを時々上 映してた。俺はそこで初めて「王立」を大画面で観た。当時、アニメからは足 は洗ったつもりだったけど(笑)、実は俺、この映画公開当時には観てなくて、 公開直後に友人宅でえらく画質の悪いVTRで観たっきりだったてこともあり、 そんで「ぴあ」で偶然このリバイバル上映を知って足を運んだワケだ。  当時の俺は、地元を飛び出して東京に出てきて新聞配達しながら某マスコミ 系の専門学校に通ってて、ちょうどシロツグ中佐と同じ21歳だったんだけど、 物語冒頭の、宇宙軍に入りながらやる気のないシロツグ君の姿はどえらく身に つまされた。「生きているから腹が減るんだ。俺はこんなとこでくたばりたく ねぇ」くぅーっ、きついぜこの台詞。そう、何かちょうど、自分としても、勝 手な思いこみの志が倦怠期に差し掛かりかけた時期だったわけだ。  初めて空を飛ぶシロツグ、次第にやる気を出してく宇宙軍士官たち……そう いった姿は、言うまでないけど、この映画の製作された当時のスタッフ自身の 姿だ、映画監督を志してた筈が落ちこぼれ集団大阪芸大のSF研(だっけ?) に流れ着いた山賀カントク、オネアミス国王トネス殿下ならぬバンダイ社長山 ○誠氏の気まぐれな出資で始まったロケット建造ならぬ映画製作……。  しかし、そんな「贅沢な遊び」に対し「こんなんでいいの?」か「俺達甘く ねぇか?」ってな疑問は間違いなくあったろう、シロツグを責める「道徳の奴 隷(笑)」リイクニやロケット建造を疑問視する取材の女性レポーター、脳天 気なシロツグは自分が悪党なんて思ったこともないもんだからいたたまれなく なって逃げ出してしまう、ところが自暴自棄になって何か出来るってワケでも なく、ぶらぶらしてリイクニ宅でごろごろするだけのシロツグ(「エヴァンゲ リオン」第四話に通じる演出)、暗殺者に狙われ、生まれて初めて人を殺しな がら、肝心なトコで目ぇつぶってるシロツグ、このへんのカッコ悪さは、確か に若さゆえの過剰(笑)が残る10代後半の身にはダサく見えるかも知れないが、 少なからず自分の社会的無力を思い知ってたつもりの身にはずいぶんとリアル に見えた。  「王立」には過剰なヒロイズム(悪側のカウンターヒロイズムを含む)、っ てのは見事に欠如してる。しかしだ、考えてもみりゃ、建設の方が破滅よりず っと難しいのだ。建設こそ一見地味でそりゃぱっとしないが、日々日常は、そ の積み重ねで成り立ってるんである。「王立」は地味で健全な青春映画と言や ぁ確かにそうだけど、そいつは単純にストレートな健全さってわけじゃない、 まぁ言ってみりゃ、古代の支那で孔子先生が「狂」に惹かれつつも敢えて与党 精神を標榜して一回転したトコでの中庸の徳を説いたような、人間の持つ過剰 性や「悪しき情念」なんかを含み込んだ上での健全さじゃないか、って気がし ている。 (続く?)


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