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アメリカ上空を征く巨大な空飛ぶ要塞、そのクルーたちは、かつての戦争に青春を捧げ、今は自由のために戦う歴戦の勇士たち、敵は地上で急速に勢力を伸ばすタカ派政治家と軍人……これは別にアウドムラとハヤトたちのことではない、1986年のイギリス映画『アメリカン・ウェイ』の内容だ。
デニス・ホッパー演じるキャプテンが操るおんぼろB29アンクル・スラム号は、空飛ぶ海賊放送「SM−TV」の発信局だ、キャプテン配下のイカレたクルーたちは、いずれもベトナム戦争の生き残り。彼らは空の上から、軍備拡大を唱える超タカ派のアメリカ大統領候補を失脚させようとする。
同作品は、80年代冷戦時代当時の保守強硬路線を進むレーガン政権とサッチャー政権への揶揄を込めていた。
1970年代、泥沼のベトナム戦争から帰ってきた者たちは、長い間、社会にコミットできず、鬱屈を抱えていた。『タクシードライバー』(1976年)、『ランボー』の第一作(1982年)などは、それを描いた映画である。
だが、80年代、レーガン大統領がその苦い経験を忘れたかのような強硬的な反共、軍備拡張政策を進める中、まさに、一年戦争帰りの旧ホワイトベースクルーたちが起ち上がったように、ベトナム帰り世代も怒りの声をあげた。
ブルース・スプリングスティーンの1984年のヒットナンバー『BONE IN THE U.S.A.』はこう歌う。
「俺はU.S.A.で生まれた。
俺はこの小さな町で問題を起こし
彼らは俺の手にライフルを握らせ
外国へ送り込んだ
黄色人種を殺すために
帰郷し 精油所に行った
雇用係が言う「私の一存ではどうにも」
退役軍人管理局に行った
そこの男が言った「まだわからんのかね」
俺はU.S.A.の敗残者だ
(三浦久:訳)
このアイロニーを込めた曲を、タイトルだけで愛国歌と勘違いしたレーガン大統領が、再選のキャンベーンソングに使おうとしたという話は有名だ。
……時はめぐり、80年代冷戦時代は終わったが、ティターンズと同じ赤い襟の軍服の中国によるチベット弾圧、ロシアによるチェチェン弾圧、そして911以降のアメリカと、超大国の覇権は形を変えて再び頭をもたげてきた。
『アメリカン・ウェイ』を改めて観ると、劇中のタカ派大統領候補がキリスト教原理主義を支持層に取り込み、聖戦を唱えている点に驚かされる、そう、911以降のブッシュ政権と同じだ。そういえば、劇中のパロディ的映像など、マイケル・ムーアの『華氏911』に合い通じる要素も少なくない。五十代となったスプリングスティーンもまた、『ローリングストーン』誌でイラク戦争への批判を唱えた。
ところで『アメリカン・ウェイ』のラスト、キャプテンは、今度は自分自身が大統領選に出ることを宣言する。シャアは地球連邦のリーダーとなることから逃げたが、大人は、改革を唱えるなら、外野からの批判だけでなく、責任も引き受けねばならないのである。
機動戦士Zガンダム
(はてな)
映画『アメリカン・ウェイ』(goo映画)
ブルース・スプリングスティーン(goo音楽)
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