HUSH
JANE SIBERRY(ISSAと改名したようです)
★★★
カナダを代表するDIVA、ジエーン・シベリー9枚目のフルレンス・アルバム。
前作である「Tennager」は子供の頃に作った楽曲をベースに制作されたアルバムでしたが、今作は子供のころに親しんだ歌などをベースに作られたようです。ですから、楽曲はとてもシンプルな作りで、ピアノの伴奏が中心となっています。
シンプルな楽曲が多いだけに彼女の歌声が全面に出てくるわけですが、元が愛唱歌だけに使う声域も狭く卓越したヴォカリゼーションの妙が聞けるわけではありません。高さの異なる声を重ねることでコーラスを行ったりとしていますが、元の単調さは隠しきれているとも言えません。
ですが、その単調な曲の中にはとても力強いものを感じます。シンプルな旋律は繰り返す聞くことで耳に親しんできます。横になりながらヘッドフォンを付けて聞いていると、いつの間にかアルバムは終わっていたりしますが、落ち着いた気分にもなっていたりします。アルバムの効果でしょうか。個人的に愛聴していきたいアルバムです。
TEENAGER
JANE SIBERRY(ISSAと改名したようです)
★★★★
ジェーン・シベリー久々の新作は、自主製作によるプライベート盤。
基本的にアコースティック・ギター1本、もしくはピアノによる弾き語り。資料が何もないので、詳しいことは良く解りませんが、「TEENAGER」というタイトル通り、10代の頃を想起して作られたアルバムのようです。
耳に入ってくるのは彼女の声と、ギター(またはピアノ)の音色。情報量は少ないのですが、その音楽は雨が大地に深く浸透してくるように、心の奥深くまで染み入り、気持ちを暖かくしてくれます。それは彼女の姿勢、世界にポジティブに向かっていこうという意志によるところが大きいのでしょう。一見パーソナルに見える歌詩も、この姿勢により、誰にでも伝わるであろう普遍的な意味性を持っています。
聞き終わったあとの余韻で、しばらくの間、優しく人に接することが出来ました。
MARIA
JANE SIBERRY(ISSAと改名したようです)
★★★☆
カナダ出身の女性アーティストの新作(7枚目)。
前作「少年の日」とはがらりと曲調を変え、オリジナルのジャズな楽曲で作品は占められています。今までの作品とは作風はかなり異なりますが、どれもジェーンならではという楽曲です。
聞き所は、20分を超える大作「OH MY MY」となります。オープニングはこれまでと一転してシタールの旋律で始まります。西洋音楽中で使われるシタールというと大概精神世界を表現していたりします。それは今作も同様で、主人公(=ジェーンなのはか分かりませんが、多分)と母親の葛藤(トラウマ)が断片的に次々と歌い上げられていきます。どのようなことが二人の間に起こったのかは想像の域を出ませんが、最後に主人公は母と決別して出て行きます…。後味という意味ではあまり良いものとは言えませんが、聴き応えのある楽曲です。
今作移行の作品は「OH MY MY」を作り上げることで鬱屈していたものを吐きだしたのか、リラックスした作品になっていきます。アクの強さという点では、彼女の作品中、この作品が一番濃いと言えます。個人的にはお勧めな1枚。
少年の日
JANE SIBERRY(ISSAと改名したようです)
★★★★
カナダ在中のシンガー・ソングライタージェーン・シベリー、通算6枚目のアルバム。プロデューサーはブライアン・イーノ。ゲストとしてk.d.ラング、マイケル・ブルック(ギタリストでもあるが、プロデュース&ミキシングとして参加していると思われる)が参加しています。
これ以前の作品も良い作品ではあるのですが、今作はそれまでのものとは頭一つ抜け出ていると感じるほど出来が良い。1993年のリリースであるにも関わらず、未だ様々な映画の挿入歌として収録された楽曲が利用されている事実がそれを証明していると思います。
収録された楽曲はどれも天上的と言いますか天使的と言いますか、つまるところ現世のものというより彼方(彼岸)から響いてくるというような感じです。
アンビエントなメロディーをバックに、時に囁くように、時に包み込むように、時に雄大に、ジェーンは抜群の歌唱力で歌い上げていきます。聞いているだけで何かに包み込まれていくような管楽を憶えます。
曲の大半は「愛」についての歌になっています。それは恋愛や情愛についての愛ばかりではなく、とりわけキリスト教でいうところのアガペー、無限の愛についてです。これにより、この作品からは神聖(スピリチャル)な印象を強く受けます(キリスト教の世界観がもろに前面に出ているからということもありますが)。
宗教は麻薬みたいなものだと言いますが、この作品も麻薬のようなもので、常習性があります。私も囚われてしまし、購入してからかなりの期間は毎日のように聞いていました。とはいえ、麻薬や宗教と異なり購入代金以上のお金はかかりませんので、経済的であるとは言えます。間違いなくお勧めの一枚。
Degradation Trip
Jerry Cantrell
★★☆
夭逝したアリス・イン・チェインズのヴォーカリスト、レイン・ステイリーに捧げられた本作は、前作以上に本家アリス・イン・チェインズの作品に近い。アリス・イン・チェインズのラストアルバムよりもアリスらしいと感じる。だからこそ、レインの不在を嘆かずにいられない。稀代のメロディーメーカーであるジェリーの紡ぐ旋律は、レインという傑出したヴォーカリストと組み合わさることで、初めて輝きを始める。ジェリーの歌声も悪くはない。しかし、メロディーを生かし切るほど存在感のある声ではない。アリスでのコーラスワークには適した声質ではあったが…。
メロディーラインの端々に、レインの歌声が聞こえてくるように感じるほど、本作はレインの歌声を前提に作られたように感じる。レインがいつ戻ってきても良いように、アリス・イン・チェインズのために書きためていた楽曲群なのかも知れない。そう思うと、ただやるせない気持ちになるばかりだ。しかし、レインはもう居ない。アリスのファンは、ジェリーの今後の活動を暖かく見守ろうではないか。そして、新しいヴォーカリストや新しい仲間達と新バンドを結成することを期待しよう。
BOGGY DEPOT
JERRY CANTRELL
★★★
アリス・イン・チェインズ(以下AIC)のギタリストであり、メイン・ソングライターであるジェリー・カントレルのソロ・アルバム。同じくAICのショーン・キニー(Drums)、マイク・アイネズ(Bass)は勿論のこと、PRIMUSのレス・クレイプール(Bass)、PATERAのレックス・ブラウン(Bass)、FISHBONEのノーウッド・フィッシャー等がゲストとして参加しています。
あえて言うまでも無いことだが、ここにあの男はいない。だが、彼を除いた他の男達は集まっている。男達の先に進もうとする意志や創作への意欲が、これ以上あの男を待つことが出来なかったのかもしれない。先に始めておき、あの男が後から参加するだろうと信じていたのかもしれない。しかし、どんな不参加の理由を想像(創作)してみても、あの男の声がここに無いと言う事実は動かせない。悲しいことだけれど、それが現実だ。
けれど、私の頭の中では、彼の声が響いている。暗鬱とした雲が垂れ込めた世界を微かに照らす、仄かな輝きを持った黒色の光のように。精彩に欠けていたその世界が彼の声を合図に彩りを増していく。幻聴と言うようなものでは無い。頭の中で、彼の声を元に曲をリアルタイムに変換(再構築)しているのだ。
って、危ない人が記述しているような感じになってきたので、ここらで地に戻します。
上記の文章でなんとなくお分かりになるかと思いますが、一部の楽曲が、どうもレインのヴォーカルを前提に作られているようなふしが見うけられるのです。試しにレインのヴォーカルを頭の中で曲にはめ込んでみて下さい(危ない?)。どうです、、しっくりいくでしょ?おそらくこのアルバムは、その制作の途中までAICの4枚目として作られていたのでしょう。で、なかなか腰をあげようとしないレインなど待っていられないと、途中からジェリーのソロとして発表することになったと。
さて、このアルバムの評価ですが、インストのパートに関しては特に文句はありません。しかし、ヴォーカルには難があります。AICの3枚目なんかを聞いた方はご存じかと思いますが、ジェリーの声と言うのは、線が細く、通りが悪いんですよ。レインの声はとても通りが良いので、なおのこと比較してしまい、ジェリーの欠点として強調されてしまったりするんです。ですから、AICのようなタイプの楽曲には、合い辛いということになってしまいます。彼の声に合わせた曲ではそこそこ様になるのですが、そうすると曲自体にAICタイプほど面白く無いという結果になってしまうという次第です。どっちにしても踏んだり蹴ったりなんですよね。
AICとして復活の際に、ライブでこのアルバムの楽曲をやることになれば、レインをヴォーカルに据えて曲を再構築していただきたいと。勿論、ライブ盤の発売は絶対です。
と言うことで、AICのファンならば買いなんですが、ヘヴィーな音楽が聞きたいうだけの方にはお薦めしかねます。
Pieces Of You
Jewel
★★★★
アラスカの小さな田舎町ホーマー出身の女性フォークシンガー、JEWELのデビューアルバム。
リリースされたのは95年の2月ですが、大ヒット(本国アメリカにて、500万枚を超えるセールスを記録)を記念し、ボーナストラックとしてフーリッシュ・ゲームズのラジオヴァージョンを追加しての再発売。
彼女の声は、成熟した女性のそれと、未だ幼さを感じさせる繊細なものとの間(はざま)を揺れる。そしてその揺れは、彼女の歌詞世界にも現れている。TEENAGE的な視点から世界を見ているかと思うと、俯瞰したところで冷徹に世界を語ったり。ミクロな視点にマクロな視点なんて安直過ぎるけど、これは大事だし、なかなか持ち得るものじゃない。
楽曲にだけ目を向けると、ほぼフォークギター1本の弾き語りという形式のため、派手さはない。また、曲自体も特に凝った構成をしているわけでも無い。しかし、これが秀逸な歌詞と組合わさったとたん輝きだす。特に歌詞が一編の物語仕立てになっている楽曲は「見事!」の一言に尽きる。
ということで歌詞カードを片手に耳を傾けて下さい。
CONTRAVERSIAL NEGRO
THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION
★★★☆
プロモーション用にアナログ限定600枚で制作されたライブアルバム(アリゾナ州はトゥーソンにて収録)を、日本からのオファーによりCD化しての正式リリース(日本限定)。全19曲(50分44秒)。初回のみ限定特殊パッケージ。
ギター二人にドラムスというベースレスな3人編成で、よくもここまでのグルーブ感を出すことが出来ると感心する。三人の間に、スペシャルな信頼、技術、相性の良さが存在していなければ不可能なことだろう。そして、全体に通底するハッピーなヴァイブと予想外のストイシズムには、驚きを禁じ得ない。
エンターテイナーであると共に、純粋に音楽を求道する姿勢は、爽やかな感動を与えてくれた。
NOW I GOT WORRY
THE JHON SPENCER BLUES EXPLOSION
★★★☆
ジョン・スペンサーBLUES EXPLOSION、通算4枚目になるフルレンス。
前作「orange」は、日本でもヒットを飛ばしたのが記憶に新しいところ。
爆発しそうな衝動。そいつを音楽という形に昇華させたら、ブルースで、エクスプローションしてしまったという感じ。特別新しい音楽を作りたいとも思っていないと思う。そして、こういうバンドに成りたいというヴィジョンも無かったと思う。ただ、俺たちって格好いいじゃん。イェーイってんで、好きに演奏してたらアルバム1枚出来ました、と。
けど、好き勝手に作ってるだけで、格好いい物が出来るはず無い訳で。そこはそれ、コダワリと知識結集し、さらに練習重ねまくって創ってます。
先入観抜き、難しいこと考えるの無しで楽しんだもの勝ち。
JUGULATOR
JUDAS PRIEST
★★★☆
男は新しきものを求めに行くと言い残し、去っていった。それは、残された者達にとっては屈辱とも取れる仕打ちである。何故俺たちとは出来ないのか?俺たちにそのような才能は無いとでも言うのか?様々な疑問が頭を過ぎったに違いない。しかし、彼らは無言で男を見送った。男を見返すには、言葉では駄目なことを良く解っていたからである。
そして5年の歳月が流れ、彼らは去っていった男に勝る人材と巡り会った。その人材は男の持っていた力と同じだけの力を持ち、更に若さとそれに伴う発展の可能性を持っていた。彼らは新たな男の才能に驚喜した。これであいつを見返すことが出来ると。
それから更に2年、彼らはついに作品を完成させた。そしてこのとき、彼らの脳裏からは、悪夢のようにつきまとっていたあの男の姿が消えていった。そして、彼らの顔には満面の笑みのみが浮かんでいたのだった。
メタルゴッドの帰還を祝し、熱い文章を創作してみたが、どうでしょう。ちょっとプロレス記事を意識してみました。
と、そんなことより、肝心の音の話。
まず、誰もが気になるのは、新ヴォーカリスト、ティム”リッパー”オーウェンズのことでしょう?で、私の評価ですが、◎です。元々ロブ・ハルフォードの声質に似ているらしく、更に歌唱法まで似せているので、違和感は全く有りません。それどころか、若いだけに声の伸びも良く、これから成長するであろうことを考えると、滅多に現れない逸材と言えます。
さて、今度は曲の話。どれも力のこもった力作なのだけれど、逆に力が入りすぎていて、面白みが無い。引くべきところは引き、曲にメリハリを付けて盛り上げるようにしてくれないと、聞いていて飽きてしまう。ティムはバラードもいけそうなので、ハードロック的なパワーバラードを入れてくれれば、良かったのにと感じる。
総合的に見て、今作は及第点は上げられるが、傑作では無い。しかし、次作への期待が持てる好作品であることは確か。アイアンメイデンのように、今後のアルバム購入は止めようと思わせたりはしません。
'98LIVE-MELTDOWN
JUDAS PRIEST
★★★☆
ヴォーカル交代後のライブを収めた2枚組みアルバム。
HEAVY METALというジャンルで括られる音楽を演奏するバンドは、一時期よりよりは減ったと思うが、依然多い。しかし、その中でもジュダス・プリーストというバンドの存在は別格であり、最重要である。なぜなら、彼等こそがHMであり、その存在の示すものがHMの定義なのだ!と、生っ粋のHM信者は信じている(に違いない)。
さてこのバンド、数年ほど前にヴォーカルが脱退した。ヴォーカルと言えば、バンドの華であり、顔である。しかも、辞めた彼はゲイであることを告白するというおまけまでついていた。男魂(だんこん)ロックであるHM神のご神体が、(HM信者にとっては)女々しさの象徴であるゲイである。現人神と崇めていた天皇が人間宣言した並の衝撃を信者達の心に与えたにちがいない。2つの衝撃的出来事で、彼等の心はズタズタに引き裂かれてしまったことだろう。
しかし、ここに新たな男が加入した。前任者に良く似た声を持ち、外見からして男臭い兄貴タイプのナイスガイである(<多分)。そして、彼の参加によって制作されたアルバムは、信者たちの憂いを払拭する、男魂のこもったHMであった。信者は熱狂するように、新たな神を迎えた。
新たなる神の降臨からしばらくして、信者達は考え始めた。彼が過去の楽曲を歌ったらどうなるのだろう?彼の声は前任者に良く似ている。きっと、男色というおぞましいカースを取り払う、素晴らしいものが聞けるに違いない!と。
そう、このアルバムは彼等の想いを適えるべく収録されたライブアルバムである。そして、このアルバムは新たなる経典であり、ここから新たなるHMの新世紀がはじまるのだ!
再生ボタンを押すと、いきなり熱く燃えたぎる男達の想いを込めた「プリースト!プリースト!」という会場を割れんばかりに響き渡る叫び声。エレクトリックアイの演奏が始まった途端、今度は「おおおおおっーーー!」という太い野郎達の嬌声が始まった。勿論、野郎立ちが、己が傷ついた男魂を癒すべく、リッパーと一緒に歌い始めたことは特筆するまでも無い。曲のキメのさいには、さも当たり前のことであるかのように、絶妙のタイミングでコーラスを加える。観客以上に過剰なリッパーの熱いMCに、これまた熱く答える信者の群れ。歓喜に何度もむせびつつ、随喜の涙を浮かべているであろう。こうして、男達の宴は、男魂からの熱いほとばしりを何度も放出させながら、果てしなく続いていくのだった・・・。
