ICE
CREAM GENIUS
H(Steve Hogarth)
★★☆
Marillionのヴォーカリスト、スティーブ・ホーガスが1997年にH名義でリリースしたソロアルバムの再発盤。メインの参加アーティストは元JAPANのRichard Barbieri(Key)、元XTCのDave Gregory(G)、元BlondieのClem Burke(Dr)、元EurythmicsのChucho Merchant(B)、元ValentineのLuis Jardim(Per)。その他、ゲストアーティストとして、元JAPANのSteve Jansen(Per)、Tim Wheater(Flu)等が参加しています。
バンドのサウンドを表現する言葉にケミストリーというものがあります。化学変化という意味の英単語ですが、それぞれ独特の個々を持ったメンバーが集まってプレイした際、予想以上のサウンドが出せる時などに使ったりします。有名どころで言うと、レッド・ツェッペリンや、第1期のKINGCRIMSONにはケミストリーが発生していたように思います。
このアルバムはMarillionのヴォーカリストであるスティーブ・ホーガスのソロアルバムです。これが初めてのソロアルバムでもあります。ソロというと、アーティストの個性や趣味が良く出るものですが、このアルバムの音楽性はMarillionとそれほどかけ離れたものではありません。サウンドのバリエーションには富んでいますが、方向性はMarillionと変わらないと言って良いでしょう。しかし、このアルバムを聴いていると、しばしば物足りなさを憶えます。リチャード・バルビエリを筆頭に、参加アーティスト達はいい仕事をしていますので、インスト面での不満があるというわけではありません。ですが、どうしても物足りなく思うときがあるのです。
Marillionのアルバムを取り出して聞いてみると、その答えはすぐに解りました。
ホーガスは決して巧いヴォーカリストではありません。とても味のある良い声ですが、音程は時に危うさを見せたりします。しかし、Marillionではその危うさをロザリーを中心にメンバー全員で巧く補っています。それどころか、その危うさすら味になるように、生かしてさえいます。その効果は素晴らしく、彼らのアルバムを買い続ける大きな理由でもあります。Marillionというバンドにはとても幸福な化学変化が発生しているように思うのです。
とはいえ、このアルバムが駄目な作品かというと、そういうわけでは決してありません。繰り返し聞き返すことで、味の出てくる良い作品です。この辺もマリリオンに近いといえます。ゆっくりと染み入ってくると言いましょうか。入手し易いアルバムでも無いので、無理しても聞く必要はありませんが、Marillionのファンならば聞いて損は無い作品だと思います。
HAPPY FAMILY
HAPPY FAMILY
cuneiform records rune73
★★★
米キュネフォームよりいきなりの海外デビューを果たした、ハッピーファミリーのファースト・アルバム。
本作はパワフルな直球「ROCK&YOUNG(岩と若者)」から始まり、HMライクな「回天(人間魚雷)」を交えつつ19分を越える大作「NAKED KING」で壮絶なカタストロフを迎える。
リコメンディッド・ロックの流を組む作品だが、それらと比して、メンタルな部分よりフィジカルな部分に重きを置いているようにも感じる。
日本ではアルバムを出さずに、いきなり海外レーベルからのデビュー!と、一昔前ならば話題となり、快挙だったのかもしれない。しかし、いまではそれほど珍しくもない、自然なことになっている。この不景気により、インディーズ・レーベルまでもが、売れる作品をということで保守化せざるおえない状況下、より受け入れる側のキャパシティーが大きい海外のインディーズレーベルと契約を交わすのは当然のことなのかも知れない。
Resurrection
HALFORD
★★★☆
元ジュダス・プリーストのロブ・ハルフォードがHALFORD名義で出したフルレンスアルバム。プロデュースはトライブ・オブ・ジプシーズのROY・Z。
アイアンメイデンはヴォーカルに問題を抱えていたため、ブルース・デッキンソンがバンドに戻ることに対しても、それほどの問題が発生しなかった。しかし、ジュダスプリーストにはリッパーというロブに勝るとも劣らない新ヴォーカルの存在がある。そして、リッパーとメンバーの結束は堅い。ロブがいくら戻りたいと思い、メンバーに懺悔しようとも、それが許されることはない。ロブは孤立無援で闘っていくしかないのだ…。
ということで、ロブはジュダスに頼ることなく、自分の存在を輝かせなくてはいけないことになりました。そこで、自分に最も合うのはどんな音楽なのだ?と思索したに違いありません。遠からず、「メタルゴッド」と世界中のコアなHEAVY METALファンから崇められた日々のことに考えが行き着いたことでしょう。しかし、あのような音楽をやるにはジュダスのようなメンバーが必要です。今の英米の音楽界にあのような音楽をプレイする、しかも優れた人材なんて…。いや、居ますね。一人。ブルース・デッキンソンのソロ作品で優れたプロデュースとソングライティング、ギタープレイを聞かせてくれたあの人のことです。そう、ROY・Zですよ。彼なら、僕の折れた翼を癒し、また大空へと羽ばたかせてくれるに違いない!ロブ君はきっとそういう考えに行き着いたんでしょう。そして、その考えが間違っていなかったことはこのアルバムが証明しています。
今のジュダスよりジュダス的なHEAVY METALがここでは展開されています。メタルファンにお薦め。
TRA
HEDNINGARNA
★★★☆
スウェーデン出身のトラッド・バンドHedningarna通算3枚目のアルバム。
今、トラッド音楽がラジカルに進化を遂げ、熱いらしい。このアルバムはそれを端的に示す、好サンプルの一つ。伝統を踏まえつつも、最新の音楽技術を駆使することによって、モダンにハイブリッド化している。
とにかく、このアルバムを聞くことによって私のトラッド感は一変しました。単に電気処理を加えただけのトラッド音楽だったとしたら、それほどの関心を寄せなかっただろう。しかしこのアルバム、なんかこうロックしているといえば良いのだろうか?攻撃的というか野生を感じるというか・・・。でも、これって元来この種の音楽が持ち合わせていたものだ。古代、恐れ奉る対象たる荒ぶる神への祭祀には、貢犠とともに歌が捧げられていた。この音楽も、その流を組むのものだからね。
AFTERTASTE
HELMET
★★★★
ヘルメット、通算4枚目のフルレンス・アルバム。前作「BETTY」にて加入したギタリスト、ピーター・メイシンドは早くも脱退し、ニューヨーク出身のハードコア・バンド、オレンジ9mmのギタリスト、クリストレイナーが加入しています。しかし、今作収録時には、まだピーターが在籍していたため、彼がプレイしています。
格好良いっす!延びに延びたアルバムなんで、正直あんまり期待していなかったんですが、こりゃ彼らの最高傑作です!
プロデュースを担当するテリー・デイトの才覚でしょうか?非常に聞き易くなっています。しかし、それはポップ化によるものではありません。あくまでも、ズシリと腹に響くヘヴィーなギターリフを基調に、ヴォーカルのメロディーラインやもう1本のギターにて印象的なリフレインを奏でるといった感じなんです。
今作によって、HELMETはかなりセールス的にも飛躍するのではないでしょうか?メタル、ハードロック、ハードコアのリスナーでこの作品を無視する方がおかしいとさえ感じます。とにかく必聴のアルバム。お勧め!
Devil You Know
Heaven And Hell
★★
Black Sabbathの10枚目のアルバムとなる「Mob Rules」制作時のメンバー(G:トニー・アイオミ、B:ギザー・バトラー、Vo:ロニー・J・ディオ、Dr:ヴィニー・アピス)にて製作したニューアルバム。権利上の関係でバンド名としてBlack Sabbathが使えないため、Heaven And Hell名義でのリリース。
※ 同バンド名にて2007年よりライブ活動を開始しており、今回は初のスタジオアルバム(ライブアルバム「Live from Radio City Music Hall」を2007年にリリース済み)。
ブラックサバスの歴代ボーカリスト(アルバム参加者のみ)を好みの順に並べると、オジー・オズボーン>トニー・マーティン>ロニー・ジェイムス・ディオ>グレン・ヒューズ=イアン・ギランといった感じになる。オジーはオリジナルのメンバーであり、彼が在籍時のサバスはHeavy MetalやDoom、ストナーロックの始祖的存在でもあるので別格だが、次に来るのはトニー・マーティンだ。彼の参加したアルバムの中でも「Headless Cross」「Tyr」は様式美系Black Sabbathの極(きわみ)と言える。そしてロニー・J・ディオとなる。日本では人気・評価共に高いディオだが、私は正直苦手とするタイプのヴォーカリストだ。歌唱力は評価するのだが、彼のねっちっこく溜めて歌う歌唱法と声質が生理的に駄目なのだ。それでも「Heaven And Hell」は名盤であるとは思うし、表題曲は名曲と言えるだろう(Judas PriestのRob Halfordがヴォーカルをやったバージョンの方が好きだが)。
さて、本作である。ディオの歌唱法に合うのは、疾走感のある曲や様式美形の曲なわけだが、1曲目からいきなりローチューンの遅い曲だ。溜めに溜めて歌い上げる。これが延々と続き、7曲目で疾走感のある曲と思ったら中盤からヴォーカルのみテンポが落ちる。そして次からまた重たい曲。ディオの苦手な私には拷問のような展開が続く。結局、最後まで聞き続けることが困難となり、何度もスキップを押してしまう。
つまるところ、好みの問題につきるのだが、似たような感想を持つリスナーは結構いるのではないかと考えている。
Cream
HOLY BARBARIANS
★★☆
元THE CULTのイアン・アスペトリーが結成したニュー・バンドのファースト・アルバム。
個人的には傑作だと思うザ・カルトのラスト・アルバムである「THE CULT」は、捻れたポップ感と適度なサイケ感が絶妙に入り混じり、なんとも魅惑的な音楽空間を作りあげていた。で、このアルバムの方はといえば、ちょっと微妙な出来。嫌いでは無いのだけれど、物足りない。英国風味がすこし薄らいだからかもしれない・・・。
