Movie Review カ

「彼女は最高」 ’97米
原題 SHE'S THE ONE
監督・脚本・主演 エドワード・バーンズ
製作総指揮 ロバート・レッドフォード
音楽 トム・ペティ
撮影 フランク・プリンジ
出演 マイク・マックグローン、キャメロン・ディアス、マクシーヌ・バーンズ
評価 ★★★★

<内容>
兄ミッキーは出会って間もない女性ホープと電撃結婚をし、周りを驚かせる。一方、弟のフランシスは何カ月に渡って、妻を裏切って別の女性との関係を続けていた。しかも、元兄の婚約者であるヘザーと・・・。

<感想>
単純な男女の三角関係という構図を構築するのではなく、兄の妻としてホープ(このネーミングが意味深)という女性を登場させることにより、ドロドロした愛憎劇に陥らせないあたりが、エドワード・バーンズ監督ならではといった感じを受け、非常に好ましい印象を映画に対して持つことが出来ました。 最近は、やたらと暴力によって現在の世界を描写する物語に溢れています。しかし、世界を描写する方法が暴力しかないとしたら、恐ろしいことでありますし、悲しすぎることでもあります。そのような手法を用いずに現在(いま)を描写する、このような作品に多くの賛同者が現れることを望みます。

「キャリアガールズ」 ’97英
原題 CAREER GIRLS
監督・脚本 マイク・リー
撮影 ディック・ホープ
音楽 ザ・キュアー(挿入歌)
出演 カトリン・カートリッジ、リンダ・ステッドマン、ケイト・バイアーズ
評価 ★★★★

<内容>
6年振りに出会う大学時代の親友、ハンナとアニー。再会の始まりは、ぎこちない挨拶から始まった。二人の間を隔てていたものは何か?現在と過去を交錯させつつ、物語はそれを語っていく。

<感想>
疎遠になってしまった友人と久しぶりに会うということは、嬉しい気持ちと同時に、妙な気恥ずかしさも感じる。それは、過去の自分と現在の自分とのギャップあたりから生まれる感情なのだろうけれど、それだけでは言い表わすことが出来ない微妙な感情も混じっていたりする。
この映画に登場する主人公二人を演じる役者達は、この微妙なシチュエーションを見事に演じている。演じるという言葉が不自然に感じるほど、自然な演技で。そう、台詞からだけでは窺知る事の出来ない、微細な感情のゆれが見事に演じられているのです。それは恐ろしいまでの演技力と言えるでしょう。

役者達の細やかな演技に注意して見る事を薦めます。作品がより深く、豊かに感じられるでしょう。お薦めの映画です。

「キル・ビル VOL.2」 '02米
原題 KILL BILL VOL.2
監督・脚本 クエンティン・タランティーノ
撮影 ロバート・リチャードソン
音楽 THE RZA
出演 ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ダリル・ハンナ、マイケル・マドセン
評価 ★★★

<内容>
復讐の旅を続けるブライドの標的は残り3人となった。片眼の女殺し屋エル・ドライバー、ビルの実弟のバド、そしてビル。ビルとブライドの過去と現在が交錯しつつ、彼女の復讐劇は終わりへと近づいていくのだった…。

<感想>
そもそも1本の映画として作られたわけで、前作の路線を踏襲していることは言うまでもない。だが、前作とは少々毛色が違う。それは、VOL2のストーリー内で各所に盛り込まれたデヴィッド・キャラダイン演じるビルとブライドに対する愛憎劇に良く現れる。特に、ラスト30分近くにて延々と続く彼と彼女のシーン。このシークエンスが、今作を前作と差別化すると共に、破綻しがちなストーリー展開に筋を通している。また、物語に歪ではあるが恋愛劇を導入することでアクションやパロディが全面に出すぎて少々単調であった作品世界に深みを与えることにもなった。これは、キャラダインの渋い演技に拠るところが大きく、また、彼無くしてはこの物語は上手く展開していかず、失敗していたであろうとまで思わせてくれる。

とはいえ、少々冗長と思えるシーンも多く、ダリル・ハンナの演じるエル・ドライバーやマイケル・マドセンの演じるバドの各種エピソードはもう少し工夫の余地や、不要であると感じる。1本にまとめて3時間半程度の長さが丁度良いように思える。トータルで見ると、やはり過去のレザボア・ドックス、パルプフィクションの方が作品としては数段上と言えるだろう。(ただ、個別のエピソードそれぞれは面白いが全体として整合感に欠けるという仕様は、6,70年代に撮られた日本のアクション映画や香港映画に良く見受けられるわけで、キルビルのフォーマットも監督の好きなこれらの作品群へのオマージュであるならば、評価は変わってくるわけだが…)

「キル・ビル VOL.1」 '02米
原題 KILL BILL VOL.1
監督・脚本 クエンティン・タランティーノ
撮影 ロバート・リチャードソン
美術 種田陽平、デヴィッド・ワスコ
音楽 THE RZA
アニメ プロダクションIG
出演 ユマ・サーマン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ、サニー千葉、栗山千明
評価 ★★★★

<内容>
結婚式当日に、以前所属していた組織の殺し屋達に襲撃されるブライド(仮名。本名は作品中でも秘される)。一命は取り留めるも、意識は戻らず昏睡状態となってしまう。4年後、奇跡的に目覚めたブライドは自分と、身ごもっていた我が子の復讐を開始するのだった。

<感想>
バッド・テイストで馬鹿馬鹿しい正統的なB級映画。視聴者に伝えたい深遠なテーマなんてものは無く、この作品を見たことで身に付く有用な知識もない。しかし、これは作品を貶しているわけではない。これは正しいB級映画の姿勢のひとつ。リアリズムの放棄などというのは、大前提である。

B級映画やアニメ・コミックなどを偏愛するタランティーノが、兎に角自分の好きなものを詰め込んだ感の強い本作は、いたるところにパロディーが散りばめられていると言うより、パロで作られた同人作品的なものと言っても良い。しかし、プロの作った同人作品は、時としてプロの商業作品を超える面白さを持つことがあったりする。だが、パロディー映画はパロの元を知らないと楽しみきれない諸刃の剣。この辺はプロフェッショナルなタランティーノ監督。女性の復讐譚という体裁で本筋をしっかりと通しているので、元ネタが分からなくても見ることは可能となっている。
ただ、パルプフィクションほど入り組んではいないが、章仕立てとなっている作品の流れが時間軸に対してシーケンシャルではなく、作品を盛り上げるために最適となるようシャッフルされている。例えば、二人目のターゲットが冒頭で殺され、最初のターゲットがラストで殺されるなど。また、作品中で主人公の過去の名前にはピー音が入っていて、今作で明かされることはない。次作への複線となっているのかもしれない。

今作で個人的に期待していたシーンは千葉真一なわけだが、登場シーンはさほど多くなく大活躍というわけにはいかなかった。だが、元JACで宇宙刑事ギャバンなどで知られる大場健二が千葉真一の営業する寿司屋の店員として出演したことは嬉しい驚きだった。梶芽衣子の歌が作品中で2曲(修羅雪姫のテーマと恨み節)も使われていたことにも個人的に喝采してしまった。その他にも、マニアックなパロディーのオンパレードでかなり楽しむことが出来た。作品中に出演する敵の雑兵達が付けているマスクはカトウ・マスクと呼ばれるのだが、これはブルース・リーが出演したグリーンホーネットでリー演じるカトウの付けていたマスクに他ならない。

まじめに鑑賞すると馬鹿を見るような作品だ。これまでのタランティーノ作品の中でも、本作は一番監督の趣味が炸裂している。監督と似たような趣味を持った人間が多いと思われる日本でこそ評価したい作品である。

「くちづけはタンゴの後で」 ’96米
原題 MRS.WINTERBOURNE
監督 リチャード・ベンジャミン
原作 コーネル・ウォルリック(I MARRIED A DEAD MAN)
音楽 パトリック・ドイル
出演 リッキー・レイク、ブレンダン・フレイザー、シャーリー・マクレーン
評価 ★★☆

<内容>
妊娠したために男に捨てられたコニーは、街をさ迷い歩くうちにボストン行きの電車に乗り込んでしまう。乗車券が無い為に車掌に問いつめらる彼女。偶然現場に居合せたヒューに助けられる。彼は妊娠した彼女、パトリシアと共に、実家に挨拶に向かう途中。二人と打ち解けるコニー。しかし、突然の車体が大きく揺れ始め、彼女は意識を失う。
目が覚めると病院の一室。彼女はパトリシアということになっていた・・・・。

<感想>
「あなたが寝てる間に」ライクなラブストーリー。しかし、主演がジョン・ウォーターズ映画の常連な巨漢女優リッキー・レイク・・・・。昔よりは痩せたとはいえ、ロマンティックなシーンが全然盛り上がらないぞ(笑)。悪い女優じゃ無いけれど、適材適所って考えなかったのかなぁ?サンドラ・ブロックあたりを使いたかったけれど高すぎて、周りを見たら彼女がいたというのがキャスティングの理由か?
ロマンスに浸りたいという用途には向かないけれど、人情ドラマとして見れば充分に楽しめるので、ご家族でどうぞ。

「クリムゾン・リバー」 ’00仏
原題 LES RIVIERES POURPRES
監督・脚本 マチュー・カソヴィッツ
原作・脚本 ジャン=クリストフ・グランジェ
撮影 ディエリー・フラマン
美術 ティエリー・フラマン
音楽 ブルノー・クレ
出演 ジャン・レノ、ヴァンサン・カッセル、ナディア・ファレ、カリム・ベルカドラ
評価 ★★★

<内容>
生きたまま両手を切断され、両目の眼球も摘出された死体が見つかった。発見現場も高山の絶壁の途中にある窪みという特異な事件。捜査を行うべくパリからニーマンス警視がやってくる。閉鎖的な学園都市での捜査は思うように進まない。
時期を同じくして、20年ほど前に事故で死亡した少女の墓が荒らされ、彼女のことを記録した資料が小学校から盗まれる。
一見何の関連性も無い事件はやがて絡みあい始め、おぞましい真実と共にラストで一つとなるのだった・・・。

<DATA>
監督は「憎しみ」「アサシンシンズ」のマチュー・カソヴィッツ。俳優もこなす彼ですが、今作では監督に専念。主役はジャン・レノですが、「憎しみ」でも主演を担当し、「ドーベルマン」などでは監督もこなすヴァンサン・カッセルもメインに据えることで、新旧の名優によるダブルヘッダーと豪華な作品に仕上がっています。実際、20億円とフランス映画にしては破格の制作費となっています。

<感想>
映画公開時はフランス産のサイコスリラー的な売り方をされていたようですが、実は金田一耕助調の本格ミステリーだったりします。死体も見立てであり、その死体の置かれていた状況や、死体の殺害方法などにも深い意味があります。少女の墓が荒らされていた現場に残された落書きも、実は犯人からのメッセージであったりもします(作品中でそのことについては言及されませんけれど)。同様に本格ミステリーである「薔薇の名前」あたりを連想してもらうと、どのような映画か分かるでしょう(あれほどペダンティックではないけれど)。

本来はとても好きなタイプの映画であるはずが、ちょっと評価は低めです。ラストに至る直前までは、★×4つに近い評価を考えていました。ですが、映画は106分と、この手の映画にしては恐ろしく短い。ラスト15分あたりでラストシークエンスの犯人を追いつめるシーンに入るわけですが、このあたりからの展開がちょっと無茶。衝撃のラストと唱っていますが、あまりの強引さにちょっと唖然。犯人の凶悪さと、容疑者の人となりをはっきりと対比できるように、もうちょっと彼らの描写を増やしたほうが良かったのではないでしょうか。

エンターテイメント色を強く打ち出すために、香港の舞踏的カンフーアクションなどを導入しているわけですが、ちょっと冗長。ラストに至っても、まだゲームのような格闘シーンを入れるあたりには、必然性を疑う以前に笑いが込み上げてきました。意図的な演出でしょうか?また、アクションシーンに掛かりすぎたため時間も予算もオーバー。結果的に作品が短くなったのでは?と勘ぐりたくもなります。

原作の評価が高いのでこれを購入し、今作の映像を想起しながら読み進めてみます。脳内で映画を再構築することで★×4の傑作が生まれるかも・・・。

「グリーン・デスティニー」 ’00中&米
原題 臥虎藏龍 CROUCHING TIGER,HIDDEN DRAGON
監督 アン・リー
アクション監督 ユエン・ウーピン
原作 王度廬
脚色 ジェームズ・シェイマス、ワン・ホエリン、ツァイ・クォジュン
音楽 タン・ドゥン(チェロ演奏:ヨーヨー・マ、タイトル・ソング:ココ・リー)
撮影 ピーター・パオ 美術・衣装 ティン・イップ
出演 チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨー、チャン・ツィイー、チャン・チェン
評価 ★★★☆

<内容>
天下に名を知られた武侠リー・ムーバイは瞑想のさなかに耐え難い虚無感を感じ、修行半ばにして山を下りた。そして、女弟子であるユー・シューリンの元に訪れ、北京に住むティエ氏に愛用の剣「碧名剣(グリーン・デスティニイー)を献上するように依頼する。武侠の世界から引退する決意を固めたからだ。そして、長年慕い続けていたシューリンと共に生きる道を進もうと。
北京にたどり着いたシューリンは剣を預けるが、その日の晩、賊によって奪われてしまう。そして、その賊の正体は日中にティエ氏の元を訪れた長官の娘イェンであり、彼女はムーバイの師を殺し、奥義書を奪った女賊ジェイド・フォックスの弟子でもあった…。

<感想>
監督であるアン・リーはこれまで「ウエディング・バンケット」「推手」「いつか晴れた日に」「恋人達の食卓」など、家族間の様々な葛藤を独特のタッチで描いてきました。どれも素晴らしい作品であり、ビデオで何度も見返しては楽しんでいます。
しかし、今回はその監督が武侠映画を撮りました。人間離れしたアクションで繰り広げられる格闘映画です。彼のこれまでの経歴からは想像も出来ないような作風です。更に、中国(香港)とハリウッドの合作映画であり、その製作資金は1500万ドルと大がかりとなっています。

物理の法則をとことん無視した登場人物のアクションに、映画開始当初は呆れさせられましたが、その流れるような美しい動きに魅了されてからは何の違和感も感じなくなってきました。それどころか、溢れるような熱い感情を抑える登場人物達の心情に対比するようなかたちで、その過剰なまでのアクションも作品に必要な要素であると理解することが出来ました。また、自分の心をなかなか面に出せず葛藤する主人公の思いを料理や太極拳などで表現したこれまでのアン・リー作品に通じることを感じ、この作品も、間違いなくアン・リー印の映画であると納得もしました。

映画を見ていて驚くのは、女性達の存在感です。男性の存在感を明らかに超えており、この作品は女性中心の映画であることが分かります。そして、主要な女性3人達(ユー・シューリン、イェン、ジェイド・フォックス)の存在の背後には男性たちがいます。その対象となる男性に対する感情(愛憎など)は様々ですが、彼女たちの行為に影響を及ぼしています。この辺の人間関係は時代に関係なく普遍的なものですが、悲劇となった場合には悲しくも美しかったりします。

美しいアクションだけではなく、感情を抑制しつつ細やかな身体描写で感情の機微を表現(「日の名残り」を連想させたりします)してみせたりと数多くの見所があります。ラストシークエンスなど、ため息が出るほど美しく、放映終了後、心地よい余韻に浸ることが出来ました。武侠映画と腫れ物でも見るかのように忌避せず、人間ドラマとして見ることも出来ますので一般の映画ファンにお奨めします。

「クロッカーズ」 ’95米
原題 CLOCKERS
監督 スパイク・リー
製作 マーティン・スコセッシ
評価 ★★★☆

<内容>
一人のクロッカー(クラックの売人)が商品を間引きして売った為に殺される 。翌日、男が「私が殺しました」と自首してきた。容疑者の証言があまりにも曖昧なことと、関係者の容疑者への評価があまりも良いことから、真犯人が他にいるのでは?と疑う刑事。そして、彼は容疑者の弟に狙いを定め捜査を始める。

<感想>
「真の犯人は、今のアメリカ国民を包み込む環境である」というメッセージが作品に込められているように思う。そして、それに果敢に立ち向かっていこうとする意志も。
ご覧になられる方は、是非そこらへんのことを考えつつ見て下さい。そして、少しでも考えてみてください。環境が人に与える影響の大きさを。

「ゲーム」 ’97米
原題 THE GAME
監督 デヴィッド・フィンチャー
脚本 ジョン・ブランケート、マイケル・フェリス
音楽 ハワード・ショア
撮影 ハリス・サビデス
出演 マイケル・ダグラス、ショーン・ペン、デボラ・カーラ・アンガー
評価 ★★★★

<内容>
48歳の誕生日、投資家のニコラスは3年以上音沙汰の無かった弟から一枚のカードを送られる。それはCRSという団体の紹介状。人生を一変させてくれる凄い体験が出来るからと、入会を薦められる。半信半擬のニコラスであったが、好奇心から参加を決意する。様々なテストが繰り返され、入会の為の審査が行われるのだが、CRSとはどのような団体なのか分からない。尋ねるニコラスに対し、「我々はゲームを提供しているのです」という答え。釈然としない答えに、更に疑惑を強めるニコラスであったが、入会の仮手続きを済ましてしまう。
翌日、審査に落ちたという連絡がニコラスのもとに入る。しかし、その連絡もプランの一環であった。そう、<ゲーム>は既に始まっていたのだった・・・。

<感想>
二転三転を繰り返すストーリーは、強烈なカタストロフを感じるエンディングまで予断を許さない。そのジェットコースターライクな展開をして、娯楽大作と言い切ってしまおう。これがあのセブン(映像S級で内容B級)の監督の作品とは、およそ信じられないエンターテイメントな作品だ。彼が脚本を担当していないことが功を奏したのだろうか。こいつはお薦めだ。
ただ見終わった後、あまりに真面目な人は怒り出すかもしれない。それは、この映画を見るのは2度目だと言う友人が、サスペンスフルな緊張感あふれるシーンでも終始ニヤニヤと顔を綻ばせていたということが一つの答えになっているだろう。

「ゴースト&ダークネス」 ’96米
原題 THE GHOST AND THE DARKNESS
監督 スティーブ・ホプキンス
脚本 ウイリアム・ゴールドマン
撮影 ヴィルモス・ジグモンド
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 マイケル・ダグラス、ヴァル・キルマー、バーナード・ヒル
評価 ★★★

<内容>
舞台は1898年のアフリカ。ツアヴォ川に橋を架けるために、技師であるパターソンは派遣される。到着た当日、彼は人喰いライオンをライフルの銃弾1発で倒し、作業員達の人望を得た。
しかし、基礎工事も終え、全てが順調にいくかと見えた矢先、やつらが現れた。ゴーストとダークネスと呼ばれる2匹の人喰いライオンが・・・。

<感想>
人間は、未開の地に列車という道を敷くことで、自然を制覇しようとする。しかし、自然界の象徴ともいえる魔獣が、その行く手を阻む。
この構図は、「もののけ姫」が持つテーマに通じるものがあるが、対立する人間側を比較してみると、作品の指向性の違いが良く解る。まあ、この作品は、人間対自然という重いテーマとして見るよりは、魔獣対ハンターなアクション映画として捉え、見るべきであろう。

「コレクター」 ’98米
原題 KISS THE GIRLS
監督 ゲイリー・フレダ-
脚本 デビッド・クラス
撮影 アーロン・シュナイダー
音楽 マーク・アイシャム
出演 モーガン・フリーマン、アシュレイ・ジャッド、ケリー・エルウェス
評価 ★

<内容>
作家、心理学者、刑事と、3つの顔を持つアレックス。彼の姪が行方不明となったと聞き、現場に急行する。現地の警察署を訪れると、行方不明となっているのは彼女だけではなく、8人もいることがわかる。彼女達に共通するのは、美しく、知的であること。ただ、それだけ。捜査は難航するばかりだった。そんな時に、9人目の行方不明者であるケイトが、犯人のもとから逃げ出してくるのだった・・・。

<感想>
モーガン・フリーマンが駆るのは、黒いポルシェ。もう、これだけでこの作品に対する不安がよぎる。そして、いくら姪が事件に関わっているからとはいえ、一介の刑事が管轄外の捜査に加わる事が出来るか?主人公の職業設定が、FBIの行動科学科に所属する捜査官であるならば考えられなくもないけれど(それにしたって、身内が事件に巻き込まれている場合は、捜査から外すというのが常道だ)。
ダラダラと続く物語は、呆れかえるばかり。事件の解決も、最後の最後に犯人の筆跡とある人物の筆跡が酷似していることに気がついてというもので、唐突に犯人が判明する。(キャスティングによって最初から犯人が分かる人も多いと思われるが)前もって犯人であることを匂わせる伏線がはられておらず、これではアンフェア。

メジャーからの作品であるが、雑なプロットによってC級のサイコスリラーになってしまっている。お薦めはしない。よっぽど暇な人だけ見てください。

「コン・エアー」 ’97米
原題 CON AIR
制作 ジェリー・ブラッカイマー
監督 サイモン・ウエスト
脚本 スコット・ローザンバーグ
音楽 マーク・マクシーナ、トレバー・ラビン(元イエス)
出演 ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコビッチ、ジョン・キューザック、スティーヴ・ブシェーミ
評価 ★★★

<内容>
暴漢から妻を守るため、殺人を犯してしまったキャメロン・ポー。8年間の刑期を終え、家族の元に帰るために囚人護送飛行機に乗り込んだ。しかし、その飛行機は囚人達に制圧されてしまうのだった・・・・。

<感想>
配給はハリウッド・ピクチャーズ、プロデューサーはジェリー・ブラッカイマーということで、「クリムゾン・タイド」「ザ・ロック」に続くアクション大作として制作されたことが解る作品。2作品の出来が良かっただけに、この作品に対して大きな期待を持ちながら視聴開始。

-観賞後-

次から次に押し寄せるアクションシーンの数々は、アクション大作の名に恥じない仕上がり。しかし、心熱くするものが無い。上記の2作品と比較しながらその理由を考えてみると、答えはすぐに見つかった。「クリムゾン・タイド」にしろ「ザ・ロック」にしろ、対立する双方共に「自分たちこそ正しい」という信念をもって戦った。熱い魂を持った男達同士のぶつかり合い。劇画のヒーローを彷彿とさせるような、コテコテのアナクロな戦い。これこそが、私の魂を熱くしてくれるのだ。
で、話は「コン・エア」なのだけれど、こいつは勧善懲悪型。極悪犯罪者VS不慮の事故にて投獄された主人公という構図。これでは単なるアクション映画でしか無く、余程の出来でない限り感動することがない。残念だけれど、これでは良くできたアクション映画といったところ。
そう、作品にフィットしていたかどうかは別として、スティーブ・ブシェーミの怪演は良かった。あることがきっかけで更正するのだが、それはとってもいかした演出だった。

「コンタクト」 ’97米
原題 CONTACT
監督 ロバート・ゼメキス
原作 カール・セーガン
原案 アン・ドルーヤン
出演 ジョディ・フォスター、マシュー・マコノヘー、ジェイムズ・ウッズ
評価 ★★★★

<内容>
天体観測所にて地球外生命体の存在を探す研究員エリーは、恒星ヴェガから送られている信号をキャッチする。それは、世界で初めて放送されたオリンピックにおけるヒットラーの映像、そして何かの設計図らしい図面。解読に成功した彼女達は、それが恒星間の移動を可能にする転送装置であることを知る。世界中の協力で、それは製造されることになったのだった・・・。

<感想>
もし、自分たちより高次の存在に出会うことが出来、1つだけ質問が許されるとしたら何を問いかけるだろう。この映画は、そんな機会を与えられた女性の物語。
科学を至上のものと信じ、心に余裕の無かった彼女が、邂逅の末、心のキャパシティーが拡張され、前よりも優しく人に接するようになる。これを描写したことだけでも、この映画は評価されるべきもの。
視聴後、爽やかな気持ちになることが出来た。お奨め。

<余談>
製造法が解っていることと、実際に製造するということには、越えるのが難しい大きな溝がある。このことは、何らかの製造に関わっている人ならば、実感としてお解りでしょう。ライト兄弟に超音速飛行機の設計図を渡し、作れといっても不可能であるのが自明なことのように。
って、難癖つけてしまいましたが、作品自体は素晴らしいので、この程度のことは良しとしましょう。この映画SFとして見るより、ヒューマン・ドラマとして見た方が面白いですから。