10年ぶりぐらい?ロジテックの新型トラボは久々のフルスクラッチモデル
何年待ち焦がれたことだろう? 一時期は消滅するのではとまで言われたロジテックのトラックボールである。既存モデルの大半が製造中止となった際には、噂は真実だったのかと、店頭在庫を買い置きした友人も何人か居る。結局は、型番変更と筐体の色を変えての再デビューということで、胸をなで下ろしたのはすぐ最近の出来事だ。この際、親指式の無線モデルだけはラインナップから消えた。無線と言いつつ受信機の巨大さと受信可能範囲の狭さから使い勝手も悪いので不人気のための終息と理解した。しかし今回、満を持してフルスクラッチの新型モデルとして後継機種が発売された。先代の発売から10年を経ての新モデルの登場である。
私個人は現状の有線式モデルで特に問題が無かったので購入を躊躇していたが、予想以上に価格設定が安く、NTT-Xにて3480円(送料無料)と激安だったので1台確保することにした。
M570のファーストインプレッション
今回ロジテック(日本ではロジクール)より発売された新型無線式親指トラックボールM570は、パッと見ただけでは旧モデルとそれほど変わらない印象だが、(有線式トラックマンホイールの初期型と)並べてみるとかなり変更されていることに気がつく。
鋭角的だった輪郭はほとんど面取りがされ、丸みを帯びている。筐体のサイズは微妙に小さくなり、小指の位置にあったわざわざ別パーツとしてゴム塗装された滑り止めはコストダウンの為か無くなった。
今回のモデルからボールの読み取り方式が赤色LEDからレーザーに変更され、これにより、ボールに移動範囲感知用のパターンを印刷する必要がなくなった。ボールの色も赤から青に変更され、新しいモデルに生まれ変わったことを強く印象づける。また、レーザーに変更することで分解能も上がり、300dpiから540dpiへと向上した。
無線方式も27Mhzから2.4Ghzになり、受信範囲も1mから10mと大幅に伸びた。受信用のレシーバーユニットも大型で野暮ったいものから、突起部が極小のものに変更された。また、このユニットはロジテックの独自規格であるUnifyingに対応し、同規格に準じる製品の場合には一つのレシーバーで6つのデバイスまでを制御出来るようになる(複数デバイスを使う場合には制御ソフトのインストールが必要)。とはいえ、まだこの規格に対応した製品は多くない。小型の10キーレスキーボードでもあれば購入しても良いのだが、そのような製品は無い。
筐体を裏返すと電源スイッチと電池ボックスの蓋が見られる。使用する電池は単三電池を1本で、ロジテックは公称値として18ヶ月保つと言っている。使っていないとこまめに省電力モードに移行することでこれを実現しているようだ。しかし、これには少々難があり、待機状態から復帰するまで1秒未満だがラグが発生する。このため、動作に引っかかりを感じる。また、電池ボックス内にはレシーバーユニットを収納するための穴が空いている。持ち運びや閉まっておく際に、受信ユニットを無くさないようにとの細かい配慮だ。
筐体の分解にはトルクスドライバーが必要となり、ネジは目に見える1カ所以外にも滑り止め用のゴム足の下にも隠されている。スイッチ交換やホイールの清掃などが面倒な構造になってしまった。
ニューモデルの目玉の一つである左クリックボタンのサイドに儲けられた2つのボタンはデフォルトでは「進む」と「戻る」が割り当てられており、制御ソフトをインストールすることで、他の機能(コピー&ペーストなど)を割り当てることも可能。
この追加された2つのボタンは絶妙の形状で、左クリックボタンから人差し指をほとんど移動することなく、クリックすることが出来、使い心地は悪くない。また、左右クリックはマイクロスイッチ(今回はOmron製ではないようで、クリック感は少し固め)だが、追加されたボタンはタクトスイッチになっている。
そしてホイールだが、これにはかなり難がある。このトラックボールで最大の改悪点で、コストダウンのためにかなり機構が変えられている。鉄バネから筐体と同一成形のプラスチックバネになり、中ボタンのスイッチもタクトスイッチに変更されている。このタクトスイッチは今回追加された2つのボタンとはまた別のもので、かなり固く、クリック感は最悪の部類だ。また、ホイールの回転もカチカチという感触から、安マウス同様のポコポコした感触のものになっている。高くなってもいいから、高級マウス同様のホイールをなぜ採用してくれなかったのだろう?とても残念でならない。有線モデルも新型が出るとして、同様のホイール機構ならば、購入を躊躇するだろう。
3日ほど使用してみての所感
ボールの印刷パターンが無くなったと言うことで、高速に動かした際の追従性に不安を覚えていたが、読み取りがレーザーのためか、動作には全く問題が無い。ちょっとでも速く動かすと明後日の方向に動いたサンワのトラックボールとは次元の違う仕上がりだ。追加された2つのボタンも使いやすい。以前の無線モデルは50cmも離すと挙動が怪しかったが、新型は数メートル程度では全く問題が無い。返す返すも、ホイールの改悪がとても残念だ。
とはいえ、改悪点と改良点で使い勝手は相殺され、標準以上の仕上がりとなった新型トラックボールではある。価格の安さも手伝って、売れ行きも好調のようだ。願わくば、トラックボールの市場が拡大し、ホイールの改善されたトラックボールの開発が行われるのを祈るばかりである。出来れば、このトラボの保証期間3年の内に出てきてくれるととても有り難いのだが…。