●単行本(5/6 増補)


●単行本未収録ながら重要と思われる文章(1)

●単行本未収録ながら重要と思われる文章(2) 5/6UP

『厩舎物語』 (日本エディタースクール出版部 1990年12月14日 刊)  競馬場の賑わいの影にある厩舎、そこに生きる馬たちと、その馬たちに携わ る仕事を務める数々の人々の姿を、等身大の位置から活写した貴重な記録。  民俗学と言うより、第一級のルポルタージュ・ジャーナリズム作品として面 白い。競馬好きの人にも、そうでない人にも、厩舎という空間の空気を丹念に 教えてくれる一冊である。 『民俗学という不幸』 (青弓社 1992年5月25日 刊)  刊行後、アカデミズム業界の一部に波紋を引き起こした大月隆寛の代表作。 80年代という時代にあって、本来リアルタイムに生きる民衆の姿を活写するも のであったはずの民俗学が研究室の学問に変わり果て、学問ごっこに安住する 若い学者が量産されていった過程が赤裸々に暴露されている。  特に第4章の「『かっこいい』のある風景」は、今や完全に「歴史」になっ てしまった80年代ニューアカデミズムの実像を知る資料として貴重だ。 『瓦礫の活字を踏みならし 乱調、このニッポンの歩き方』 (図書新聞 1994年8月25日 刊)  『社会運動』『週刊読書人』ほかに掲載された文章を再録。その内容はサブ カルチャー、当世の若者論、状況論など多岐に渡る。  特にポイントだと思えるのが第5章の『大学・若者』に関する項目、「大学 院進学」「就職」「恋愛」など、いまどきの大学生がついつい考えなしに進ん でしまう問題の深層を、つぶさに解きほぐして見せている。 『小林よしのり論序説 ゴーマニズムとは何か』 ※呉智英編 浅羽通明ほかと共著(出帆新社 1995年 2月16日 刊)  「小林よしのり一人を矢面に立たせるな」と題して、『Meets Regional』と 『正論』に書いた「ゴーマニズム」に関する記事を再録。更に、一度『週刊文 春』で小林氏をからかった人物である永尾カルビ氏について評価すべき側面も あることなどを指摘。「ゴーマニズム宣言」を影から支えるブレーンの一人を も務めつつ、立場的には決して安易なよしりん盲目的支持・礼賛には陥らず、 バランスを取っての発言を行っている。 『いまどきの物言い』 (毎日新聞社 1995年 3月25日 刊)  月刊『Meets Regional』誌に1991年1月から1994年4月号まで連載されたコ ラムを収録。毎回その時々の流行り言葉や手垢の付いた慣用句を取り上げ、そ の内実をさばいてゆくという趣向。挙げられた『物言い』は、「フリーター」 「ゼンキュートー」「傷つく」「都市生活者」「おたく」「電脳」「ラテン系」 「右翼」………と、実に多彩だ。  各項目ごとに描かれたみうらじゅん画伯のイラストも楽しい一冊。 『無法松の影』 (青弓社 1995年11月10日 刊)  3年の歳月をかけて執筆された大月隆寛入魂の書き下ろし作品。「無法松の 一生」のタイトルで戦前から語り継がれた物語『富島松五郎傳』を、その成立 過程、同時代背景に即して捉え直し、戦後きちんと語れることのなかった、明 治末から昭和という近代の成立過程の中での「日本の男」の姿を探る。  単なる「古き良き大人の男」マッチョ主義へのノスタルジーだけの書物と誤 読されている節があるようだが、第一級の「大衆の中の知識人」論としても読 める一冊だ。 『大月隆寛の無茶修行』(上/下) (毎日新聞社 1996年 2月10日 刊)  1993年7月から1995年6月まで毎日新聞の毎週水曜夕刊一面を使って連載さ れた紙内誌シリーズを収録。ほぼ毎回、大月氏がその時々の流行り物や人物、 一般に知られていない様々なものを取材してくるという構成である。取材対象 はこれも実に多彩に渡り、場所としては国技館、京都大学西部講堂、謄写版印 刷の工場、騎手の養成学校など、人物としては上野千鶴子、本多勝一、呉智英、 小林よしのり、大川興業の大川豊総裁、モダンチョキチョキズの濱田マリなど など………実に様々なジャンルがフィールドワーク対象になっている。 『猥談 近代日本の下半身』 ※赤松啓介・上野千鶴子との鼎談(現代書簡 1995年 6月1日 刊)  柳田國男以来の日本民俗学が余り触れてこなかった「民衆の性生活」につい て深く切り込んだアカデミックな艶笑本(?)。実際、笑えるお話は多い。  メインは赤松啓介(共産党活動家を経て民俗学者となる。性の民俗史の専門 家)と、上野千鶴子(京都精華大学教授にしてフェミニズムの騎手)の対談だ が、両者の中間から時折合いの手を挟む大月氏の発言も少なくない。  教科書では絶対に知ることの出来ない近代日本の民衆史がここにある。 『地獄で仏』 ※ナンシー関との共著 (文藝春秋 1996年 5月15日 刊)  月刊『CREA』に92年12月から95年11月まで連載されたナンシー女史との 巨体コンビによる対談集の単行本化。全回ともナンシー画伯の消しゴム版画に よるカット付き。  女性誌という体裁ゆえかいつもの大月節はやや抑え目で(?)ナンシー女史 にツッコミまくられている部分も少なくないが、とにかく笑える一冊。 『オウムと近代国家 市民はオウムを許容するか』 ※呉智英・橋爪大三郎・三島浩司との共著(南風社 1996年5月1日 刊)  95年10月、東京・毎日ホールで行われたオウム事件に関するシンポジウムの 再録と大月隆寛氏によるシンポ参加者三者のインタヴュー(大月氏には編集者 がインタヴューしている)で構成されている。大月氏以外の列席者はそれぞれ 呉智英(評論家・封建主義者)、橋爪大三郎(東京工業大学教授)、三島浩司 (弁護士、多くの公安事件に従事、オウム裁判では岐部被告の弁護を担当)、 と、立場も思想の背景も多彩なメンバーだ。  大月氏の、オウム信者のような「異物」が隣に引っ越してきたらどう共存す るか? という問題提起は、単一民族国家に近く、異文化との摩擦に慣れてい ない日本ではつい忘れられがちな近代市民社会の根元的テーマである。 『20世紀の千人』(全10巻) ※朝倉喬司・武田徹ほか多数による共著(朝日新聞社 1996年 刊)  ヒトラーから宮崎勤、ブリジット・バルドーから松田聖子、ジェシー・オー ウゥンスからカール・ルイス………、と、「20世紀に活躍した人物」を政治・ 思想・科学・芸能・スポーツ・文学・実業……などといった実に様々なジャン ルから1000人セレクトした人物評伝集。この中で大月氏は柳田國男、林芙美子、 今東光、宮本常一、赤松啓介、火野葭平、富島松五郎(=無法松)などといっ た人々を取り上げて書いている。  全巻だと買うには高く付くが、図書館にでもあればぜひ一度御一読頂きたい。 (訳著)『消えるヒッチハイカー』 ※J・H・ブルンヴァン著/共訳(新宿書房 1988年 刊)  アメリカの都市伝説に関する研究書。この書の刊行後「都市伝説」というキ ーワードは「子供の噂」ブームという風俗にすり替えられ、当時、大月氏は大 いにやるせない思いをさせられたとも言われる………。 『てやんでぇ!』 (本の雑誌社 1997年2月10日 刊)  『ダカーポ』誌に93年10月〜96年10月まで連載された書評集の再録。対象と なっているのはそのつどの流行りの本、つまりベストセラーである。  取り上げられているのは、小沢一郎『日本改造計画』から、鶴見済『完全自 殺マニュアル』、内田春菊『ファザーファッカー』、小林よしのり『ゴーマニ ズム宣言(5)』、カレン=ヴァン=ウォルフレン『人間を幸福にしない日本とい うシステム』、春山茂雄『脳内革命』、ビル=ゲイツ『ビル=ゲイツ 未来を語 る』、浜田雅功『読め!』、石原慎太郎『弟』などなど……。  中には明らかに大月氏が論じるには不向きと思われるものもあるが、一つの 時代論としても資料価値は高い一冊だ。 『若気の至り』 (洋泉社 1997年3月 刊)  今や伝説の「別冊宝島黄金時代」(1989年〜1992年)の大月隆寛の仕事のほと んどを再録した(「男が危ない」収録の平岡正明氏との対談などは入っていな い)一冊。その内容は「都市伝説」から「伝言ダイヤル」「連続幼女誘拐殺害 事件はいかに語られたか」「ユーミン」「ギョーカイ」「異文化」「自衛隊」 ……などと実に多彩だ。  今読み返すと、30歳前後の若き大月氏の、同世代に対する問題意識がリアル に伝わってくる文章が少なくない。



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